大日如来とは、全ての生き物の根本となる仏様です。
今回は大日如来について紹介していきます。

大日如来とは?
この大日如来は、梵名(ぼんみょう)を音訳して魔訶毘盧遮那如来(まかびるしゃなにょらい)とも大毘盧遮那如来(だいびるしゃなにょらい)とも呼ばれ、弘法大師(空海)によって伝えられた密教の教典に、登場する最高位の仏様と言われております。
大日の「日」は太陽を意味しており、「大」はその太陽はるか上回る事を表していると言われております。
大日如来は、大乗仏教(だいじょうぶっきょう)で生まれたと言われており、毘盧遮那如来(びるしゃなにょらい)を密教教義の中でパワーアップさせた仏様と言われております。
インドの五大思想として、宇宙が地・空・水・火・風の要素で考えられており、同様に密教でも5は聖教とされております。
大日如来について説かれている教典には、「大日経(だいにちきょう)」と「金剛頂経(こんごうちょうぎょう)」があります。
大日経には「胎蔵曼荼羅(たいぞうまんだら)」を、金剛頂経には「金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)」がそれぞれ説かれています。
胎蔵界は母親のお腹の中を、金剛界は固いダイヤモンドを意味しています。
それぞれの曼荼羅の中心には大日如来がおり、周りには如来を配置しているがこれは自らの働きをサポートしていると言われております。
胎蔵曼荼羅と金剛界曼荼羅の2つを合わせて両界曼荼羅と呼ばれ、宇宙の真理をこの2つの曼荼羅は表していると言われております。
1つの世界には1人の如来しか存在できないのが基本なのですが、大日如来の世界は宇宙全体を意味しており、他の如来が同一の曼荼羅に登場する事が出来ると考えられています。
大日如来は太陽神であり、東西南北の各方位を担当する仏様として四如来(四仏しぶつ)と呼ばれており合わせて五仏「五智如来(ごちにょらい)」と呼ばれております。
大日如来を中心にして、周りを四仏が囲む構成が基本となっております。
東には、阿閦如来(あしゅくにょらい)が担当しています。
この阿閦如来の「あしゅく」とは、サンスクリット語で「アクショービヤ」で、語源は「揺るぎないもの」という意味になります。
胎蔵曼荼羅とは?
胎蔵曼荼羅と金剛界曼荼羅は共に、大日如来が2種類の姿で作られております。
胎蔵曼荼羅とは、12の院から出来ております。
院と呼ばれている12の区画からなっており、曼荼羅には描かれていない東西南北の門を守る四大護院を合わせた13の院に414尊が描かれております。
その12の院は以下の通りです。
1.中台八葉院(ちゅうだいはちよういん)
この中台八葉院は胎蔵界曼荼羅の中央にあります。
大日如来を中心にして、8枚の蓮の花弁に四如来と四菩薩が描かれております。
四如来
東…宝幢如来(ほうとうにょらい)とは、修行の第一段階である発心、いわゆる悟りを開こうとする心を起こす仏様と言われております。
なお金剛界五佛の阿閦如来(あしゅくにょらい)と同体とされております。
南…開敷華王如来(かいふけおうにょらい)とは、別名を平等金剛と呼ばれており、サンスクリット語では開花した蓮の花の王を意味し、それは蓮の花が咲くように悟りの心を開かせると言われております。
開敷華王如来は、右手に袈裟の角を持ち、左手は施無畏(せむい)の印を結んでいます。
この施無畏は、一切の魔を寄せ付けない事を表す印で、衆生の不安や恐怖を取り除く仏様の力を表しております。
無畏とは、仏様の説法ちおいての揺るぎない自信を表しております。
すなわちこの無畏には、1.正しい説法をする事が出来るという自信2.自分は正しい悟り得たという自信3.苦しみの原因である煩悩を全て滅ぼしたという自信4.弟子たちに正しい悟りへの道を説く事をおそれない自信の4つがあります。
西…無量寿如来(むりょうじゅにょらい)とは、無量光とも呼ばれており、これらの尊名は、如来の大悲(だいひ)と方便が無尽であり、利益が限りない事を示していると言われております。
すなわち全ての人々の疑念や苦悩を断って、願いを叶える事を表しておられます。
北…天鼓雷音如来(てんくらいおんにょらい)
四菩薩
南東…普賢菩薩(ふげんぼさつ)
南西…文殊菩薩(もんじゅぼさつ)
北西…観自在菩薩(かんじざいぼさつ)
北東…弥勒菩薩(みろくぼさつ)
2.遍知院(へんちいん)
この遍知院は、胎蔵界曼荼羅の上部の東側に配置されており、燃え盛る三角の炎は如来の智慧を象徴しており、諸仏を生み出す母性としての院であります。
如来の智慧としての一切如来智印(いっさいにょらいちいん)を中心として、一切如来の母親である仏眼仏母(ぶつげんぶつも)・倶胝仏母(ぐていぶつぼ)・普賢延命菩薩(ふげんえんめいぼさつ)と、菩薩の徳を表す大勇猛菩薩(だいゆうもうぼさつ)、また一切如来智印の上にある小さな尊像として、火を神格化して崇拝する宗教である拝火教から釈迦に帰依した優楼頻羅迦葉(うるびんらかしょう)と伽耶迦葉(がやかしょう)が配置されております。
3.金剛手院(こんごうしゅいん)
この金剛手院は、中台八葉院の向かって右側(南方)に配置されており、薩埵院(さったいん)とも金剛部院(こんごうぶいん)とも呼ばれており、煩悩を破る智慧を象徴すると言われております。
金剛手菩薩(こんごうしゅぼさつ・別名は金剛薩埵(こんごうさった))を中心として、計21の菩薩によって構成されております。
以下がその菩薩です。
発生金剛部菩薩(ほっしょうこんごうぶぼさつ)
金剛鈎女菩薩(こんごうこうにょぼさつ)
金剛手持金剛菩薩(こんごうしゅじこんごうぼさつ)
金剛薩埵菩薩(こんごうさったぼさつ)
持金剛鋒菩薩(じこんごうほうぼさつ)
金剛拳菩薩(こんごうけんぼさつ)
忿怒月黶菩薩(ふんぬがってんぼさつ)
虚空無垢持金剛菩薩(こくうむくじこんごうぼさつ)
金剛牢持菩薩(こんごうろうじぼさつ)
忿怒金剛寺菩薩(ふんぬこんごうじぼさつ)
虚空無辺超越菩薩(こくうむへんちょうおつぼさつ)
金剛鎖菩薩(こんごうさぼさつ)
金剛持菩薩(こんごうじぼさつ)
持金剛利菩薩(じこんごうりぼさつ)
金剛輪持金剛菩薩(こんごうりんじこんごうぼさつ)
金剛説菩薩(こんごうせつぼさつ)
懌悦持金剛菩薩(ちゃくえつじこんごうぼさつ)
金剛牙菩薩(こんごうげぼさつ)
離戯論菩薩(りけろんぼさつ)
持妙金剛菩薩(じみょうこんごうぼさつ)
大輪金剛菩薩(だいりんこんごうぼさつ)
4.持明院(じみょういん)
この持明院は、中台八葉院の下段(西側)に配置しており、五尊が描かれているため五大院(ごだいいん)とも呼ばれております。
この五尊は、般若菩薩(はんにゃぼさつ)・不動明王(ふどうみょうおう)・降三世明王(ごうざんぜみょうおう)・大威徳明王(だいいとくみょうおう)・勝三世明王(しょうざんぜみょうおう)の五体が描かれております。
不動明王や降三世明王などにより、密教の仏の降伏の力を示すと言われております。
この五尊の配置は、中央に般若菩薩、その向かって右側(南側)に降三世明王と不動明王で、向かって左側(北側)に大威徳明王と勝三世明王となっております。
5.蓮華部院(れんげぶいん)
この蓮華部院は、中台八葉院の向かって左側(北方)に配置しており、第一列中央に聖観自在菩薩(しょうかんじざいぼさつ)が配置され、他の変化観音20尊が中台八葉院に向かって三方向から囲んでおり、使者として16尊で構成されているが、使者の数については諸説あります。
以下がその菩薩と使者になります。
菩薩
蓮華部発生菩薩(れんげぶほっしょうぼさつ)
被葉衣菩薩(ひようえぼさつ)
大随求菩薩(だいずいくぼさつ)
白身観世音菩薩(びゃくしんかんぜおんぼさつ)
窣堵波大吉祥菩薩(そとばだいきちじょうぼさつ)
大勢至菩薩(だいせいしぼさつ)
豊財菩薩(ぶざいぼさつ)
耶輸陀羅菩薩(やしゅだらぼさつ)
毘哩倶胝菩薩(びりぐちぼさつ)
不空羂索菩薩(ふくうけんじゃくぼさつ)
如意輪菩薩(にょいりんぼさつ)
聖観自在菩薩(しょうかんじざいぼさつ)
水吉祥菩薩(すいきちじょうぼさつ)
大吉祥大明菩薩(だいきっしょうだいみょうぼさつ)
多羅菩薩(たらぼさつ)
大吉祥変菩薩(だいきっしょうへんぼさつ)
大吉祥明菩薩(だいきっしょうみょうぼさつ)
大明白身菩薩(だいみょうびゃくしんぼさつ)
白処尊菩薩(びゃくしょそんぼさつ)
寂留明菩薩(じゃるみょうぼさつ)
馬頭観音菩薩(ばとうかんのんぼさつ)
使者
多羅使者(たらししゃ)
蓮華部使者(れんげぶししゃ)
鬘供養使者(まんくようししゃ)
蓮華部使者(れんげぶししゃ)
蓮華部使者(れんげぶししゃ)
蓮華部使者(れんげぶししゃ)
蓮華部使者(れんげぶししゃ)
蓮華部使者(れんげぶししゃ)
蓮華部使者(れんげぶししゃ)
蓮華部使者(れんげぶししゃ)
焼香供養使者(しょうこうくようししゃ)
塗香供養使者(ずこうくようししゃ)
宝供養使者(ほうくようししゃ)
蓮華部使者(れんげぶししゃ)
6.釈迦院(しゃかいん)
この釈迦院は、遍知院の上段(東方)に配置されており、仏部・蓮華部・金剛部のうち仏部に配されています。
この釈迦院には、釈尊を中心にして39の尊者が描かれております。
以下がその菩薩になります。
釈迦牟尼(しゃかむに)
虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)
観自在菩薩(かんじざいぼさつ)
無能勝金剛(むのうしょうこんごう)
無能勝妃(むのうしょうひ)
一切如来宝(いっさいにょらいほう)
如来毫相(にょらいごうそう)
大転輪仏頂(だいてんりんぶっちょう)
光聚仏頂(こうじゅぶっちょう)
無量声仏頂(むりょうしょうぶっちょう)
如来悲(にょらいひ)
如来愍(にょらいみん)
如来慈(にょらいじ)
如来爍乞底(にょらいしゃきち)
栴檀香辟支仏(せんだんこうびゃくしぶつ)
多摩羅香辟支仏(たまらこうびゃくしぶつ)
大目犍連(だいもくけんれん)
須菩提(すぼだい)
迦葉波(かしょうは)
舎利弗(しゃりほつ)
如来喜(にょらいき)
如来捨(にょらいしゃ)
白傘蓋仏頂(びゃくさんがいぶっちょう)
勝仏頂転輪(しょうぶっちょうてんりん)
最勝仏頂転輪(さいしょうぶっちょうてんりん)
高仏頂(こうぶっちょう)
摧砕仏頂(さいさいぶっちょう)
如来舌(にょらいぜつ)
如来語(にょらいご)
如来笑(にょらいしょう)
如来牙(にょらいげ)
輪幅辟支仏(りんふくびゃくしぶつ)
宝幅辟支仏(ほうふくびゃくしぶつ)
抱絺羅(くちら)
阿難(あなん)
迦旃延(かせんねん)
憂波利(うはり)
智鉤絺羅(ちくちら)
供養雲海(くよううんかい)
7.文殊院(もんじゅいん)
この文殊院は、釈迦院の上段(東方)に配置されており、中央の門の中に5尊と左右に各10尊の合計25尊が描かれております。
以下がその菩薩になります。
文殊師利菩薩(もんじゅしりぼさつ)
観自在菩薩(かんじざいぼさつ)
普賢菩薩(ふげんぼさつ)
対面護門(たいめんごもん)
対面護門(たいめんごもん)
光網菩薩(こうもうぼさつ)
宝冠菩薩(ほうかんぼさつ)
無垢光菩薩(むくこうぼさつ)
月光菩薩(がっこうぼさつ)
妙音菩薩(みょうおんぼさつ)
阿耳多(あじた)
阿波羅耳多(あはらじた)
瞳母櫓(とむろ)
肥者耶(びじゃや)
者耶(じゃや)
髻設尼(けいしに)
鄔波髻設尼(うばけいしに)
質怛羅(しったら)
地慧(じえ)
鉤召使者(こうしょうししゃ)
鉤召使者眷属(こうしょうししゃけんぞく)
鉤召使者眷属(こうしょうししゃけんぞく)
使者(ししゃ)
使者(ししゃ)
使者(ししゃ)
8.除蓋障院(じょがいしょういん)
この除蓋障院は、金剛手院の南方の向かって右側に配置されており、9尊が描かれております。
以下がその菩薩になります。
救護慧菩薩(くごえぼさつ)
破悪趣菩薩(はあくしゅぼさつ)
施無畏菩薩(せむいぼさつ)
賢護菩薩(けんごぼさつ)
不思議慧菩薩(ふしぎえぼさつ)
悲愍慧菩薩(ひみんえぼさつ)
慈発生菩薩(じはっしょうぼさつ)
折諸熱悩菩薩(しゃくしょねつのうぼさつ)
日光菩薩(にっこうぼさつ)
9.虚空蔵院(こくうぞういん)
この虚空蔵院は、持明院の下方に配置されております。
この院では、中央に主尊である虚空蔵菩薩が、向かって左側に千手千眼観自在菩薩で、右側に一百八臂金剛蔵王菩薩(いっぴゃくはっぴこんごうざおうぼさつ)が配置されております。
10.蘇悉地院(そしつじいん)
この蘇悉地院は、虚空蔵院に接しており、その西方(下方)に配置されており、中心となる尊は不在で左右に4尊ずつの、計8尊が描かれております。
以下がその菩薩になります。
十一面観自在菩薩(じゅういちめんかんじざいぼさつ)
一髻羅刹(いっけいらせつ)
孔雀王母菩薩(くじゃくおうもぼさつ)
不空供養宝菩薩(ふくうくようほうぼさつ)
不空金剛(ふくうこんごう)
金剛軍荼利菩薩(こんごうぐんだりぼさつ)
金剛将菩薩(こんごうしょうぼさつ)
金剛明王(こんごうみょうおう)
11.地蔵院(じぞういん)
この地蔵院は、蓮華部院の向かって左側(北方)に配置されており、中心に主尊である地蔵菩薩があり、上下に4尊ずつで計9尊が描かれております。
以下がその菩薩になります。
除一切憂冥菩薩(じょいっさうみょうぼさつ)
不空見菩薩(ふくうけんぼさつ)
宝印手菩薩(ほういんしゅぼさつ)
宝光菩薩(ほうこうぼさつ)
地蔵菩薩(じぞうぼさつ)
宝手菩薩(ほうしゅぼさつ)
持地菩薩(じじぼさつ)
堅固深心菩薩(けんごじんしんぼさつ)
除蓋障菩薩(じょがいしょうぼさつ)
12.最外院(さいげいん)
この最外院は、別名外金剛院と言われており、一番外側に203もの尊が描かれています。
金剛界曼荼羅とは?
この金剛界曼荼羅は、1461尊が描かれており、9つのグリッド枠から成っており、悟りに至るまでの9段階を説かれていて、九会(くえ)曼荼羅とも言われております。
この九会とは9つの仏尊の集会(しゅうえ=集り)という意味になります。
1.成身会(じょうじんえ)
この成身会は、中央の中心に配置されており、大日如来を中心にして四如来(しにょらい)など62尊が描かれており、金剛界曼荼羅の中では最も重要な会と言われております。
2.三昧耶会(さんまやえ)
この三昧耶会は、成身会のすぐ下に配置されており、大日如来を中心にして77尊が描かれており、成身会とほぼ同じ配置になっております。
この三昧耶とは、サンスクリット語でサマヤと言い約束や契約などの意味で、仏様の特徴を表す象徴物が経典により「取り決められている」事を意味しております。
3.微細会(みさいえ)
4.供養会(くようえ)
この供養会は、微細会と同じ構図ではあるが、五仏を除いた三十二菩薩の全てが合掌して、蓮華を持ちお互いに供養しあっている光景が描かれている事から、供養会と呼ばれております。
5.四印会(しいんえ)
この四印会は、成身会の内容を分かりやすくして、三会(三昧耶会、微細会、供養会)を合わせて簡略化したものが描かれております。
6.一印会(いちいんえ)
この一印会は、四印会をさらに簡略化して、成身会の内容を大日如来一尊のみで描かれております。
7.理趣会(りしゅえ)
8.降三世会(ごうざんぜえ)
9.降三世三昧耶会(ごうざんぜさんまやえ)